イワテヤマナシ研究会の設立趣意書
本研究会は岩手の宝であるイワテヤマナシ(ミチノクナシ)の利用、普及、保全を目的とします。またその目的のために必要な研究会、交流会,見学会などの活動を行います。
設立趣旨
イワテヤマナシ(ミチノクナシ)は岩手県を中心とした北上山系に自生する野生ナシです。宮沢賢治の童話「ヤマナシ」に登場するヤマナシはイワテヤマナシと考えられ、岩手に暮らす人々にとって象徴的な植物であり、貴重な財産と考えます。これまでの調査では北上山系だけでも1200本を超えるナシの木の存在が確認されています。イワテヤマナシは2007年に環境省絶滅危惧種IA類に指定されました。しかし遺伝子解析の結果、大半の個体はイワテヤマナシとニホンナシとの雑種であることを明らかになってきました。純粋なイワテヤマナシは個体数や生育地が限られており、その保全が急務とされています。
一方で雑種の個体は非常に多様性に富んでおり、とても生食には向かないものから、豊かな香りや強い酸味をもつもの、加工に適したものまで様々です。本研究会ではこれらの多様性に富んだ雑種個体群をイワテヤマナシと総称し、それらの利用・普及・保全をめざします。
かつてイワテヤマナシは飢饉の際の救荒作物として重要な役割を担っていました。地方名に残る「ケカズナシ」の「ケカズ」は岩手県の方言で飢饉を意味しています。穀物が収穫できない冷害の年でもイワテヤマナシは実をつけたことから、これを保存食として飢えをしのいだと考えられます。今でも農村部では家々にイワテヤマナシの木が残っている、あるいはかつては植えられていた、というのは昔の人々の教えを受け継いできたものでしょう。まさに岩手の人々にとって、命をつなぐ果実だったと言えます。聞き取り調査によればイワテヤマナシは果実も材も様々に利用されていました。
しかし戦後、耐冷性稲品種の登場で冷害の心配も減り、食糧事情が急速に改善し、また甘く大きな実をつける果物が栽培されるにいたり、イワテヤマナシは利用されなくなり減少の一途をたどっています。
これまでの調査・研究によりイワテヤマナシは遺伝的多様性に富み、新たな利用可能性を秘めた遺伝資源であることが明らかになってきました。そこで岩手の宝であるイワテヤマナシを遺伝資源として再び蘇らせ、新たな利用方法を開発し、地域興しに活用していただくと共に、次の世代に引き継ぐことを目的としてイワテヤマナシ研究会を発足します。
会員
趣旨に賛同していただける研究者、生産者、農業団体等関係者、食品加工業者等、行政関係者、一般市民など幅広く参加者を募る。
例会の開催
年4回程度開催しイワテヤマナシへの理解を深める。講師による講演や話題提供、意見交換の場とする。交流会、見学会、試食会などを行う。
なお本研究会は岩手農林研究協議会(AFR)に所属し、例会は基本的に岩手大学で開催する。
事務局
神戸大学農学研究科片山研究室に置く。
連絡先 〒675-2103
兵庫県加西市鶉野町1348
電話0790493123
FAX 0790490343
e-mail hkata@kobe-u.ac.jp
会費
当面、年会費はいただきません。ただし開催内容によって実費の負担をお願いします。
ご寄付は歓迎します。
呼びかけ人
片山寛則(神戸大学・発起人・研究会代表)
高畑義人(岩手大学)
菅原悦子(岩手大学・岩手食文化研究会)
植松千代美(大阪市立大学)
山本俊哉(農研機構果樹研究所)
池谷祐幸(農研機構果樹研究所)
小原 繁(岩手県農業研究センター)